vie riche

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TOKYO/OL/minimalism///

いい靴で、素敵な出会いを探しに行こう。

「いい靴は履き主を良い場所へ連れて行ってくれる」

確かイタリアのことわざだった。

私にとっての「いい靴」、レペットの靴を初めて履いたのはもう5年も前のこと。

 

イギリスに短期留学していた時、語学学校のクラスが一緒で仲良くなったフランス人の友人にママに会わせたいと言われ半ば無理やりフランスに小旅行した。

ユーロスターに乗って2時間半ほど、パリに到着した。同じヨーロッパなのにどことなく空気の温度が違うなあと感じた記憶がある。

クラスでは引っ込み思案な友人がフランスについた途端やたら元気になり、ブラックコーヒーを奢ってくれ拙い英語と3割ぐらいフランス語を交えてあれこれとパリの街を喋ってくれた。(もちろん私はフランス語が分からなかったので、曖昧に笑っていた)

 

友人と友人のママと私でオシャレだが食べ慣れない味のランチプレートを食べた後、2人は一旦家に帰ると言ったので一旦その場で別れた。

オペラ駅周辺をふらふらと歩いていた時、見慣れないお店の並びの中で急に見覚えのあるお店の名前を見つけた。

それは「repetto」。

 

当時ダンスサークルに入っていた私は、少しでも周囲に追いつこうと大学でバレエの授業を受けていた。

一緒に授業を受けていたバレエ経験者の友人が、バレエシューズはレペット一択だと言っていた。

私は大学の構内で買ったバレエシューズを履いていて、正直どちらもピンクの上履きにしか見えなかったのだけれど、きっと彼女が素敵に舞うのにこの「レペット」というブランドのバレエシューズがサポートしているのだと思った。

 

ふらふらと入っていくと、円になってずらりとカラフルなタウン用のバレエシューズが並んでいた。

繊細で綺麗で、15分ほどぐるぐるとバレエシューズに沿って円を回って見ていた。

大学に行く時は基本スニーカーで、タウン用のバレエシューズは持っていなかったしあまり興味もなかった。それでもバレエシューズの美しさに、圧倒されてしまった。

 

すると、日本人のスタッフの方に試し履きを勧められた。

 履いてみるとまるで羽のように軽く、履き心地は柔らかく、足が魔法にかかったようだった。

「日本で買うよりもかなりお買い得ですよ」と言われた。

 

ただ、当時の私にはとてもではないが出せる値段ではなかった。

また15分ほど円を回り、名残惜しい気持ちがいっぱいのまま店を出た。

 

イギリスから帰る前日、お土産を買うためプライマーク(イギリスで人気の、しまむらのような量販店)に立ち寄った。そこで似たようなバレエシューズが500円ぐらいで売っていて、思わず買ってしまった。

そのバレエシューズは日本に返ってからさんざん履き、ついには穴があいてしまった。私はまた似たようなバレエシューズを買い、それもさんざん履いた。

 

それからというもの、バレエシューズはずっと私のワードローブに入っている。

大学も、インターンも、デートも、旅行も、就活も、ありふれた日常もドキドキする非日常も、いつもバレエシューズを履いて過ごしてきた。何足も履きつぶしてきた。

 

レペットの店舗は東京にもいくつかの百貨店にあり、通り掛かるたびに店内を見ていた。

時にはセールで30%オフの謳い文句に思わず買いそうになったこともあったが、やはり手に取りやすい価格のバレエシューズを選んできた。

 

そして最近、ついにレペットの靴を購入した。

楽天のポイントが結構溜まっていたし、レインシューズのシリーズは比較的手頃だし…と言い訳しつつ、結構悩んだ。

  

そして5年ぶりに、レペットの靴を履いた。

びっくりするぐらい、あの時と同じ履き心地だった。

魔法は解けなかった。

 

たくさんのバレエシューズと過ごしてきて、きっとこれからもたくさんのバレエシューズと過ごす。

社会人になって学生の頃より少しだけ余裕が出てきた私は次もレペットを選ぶかもしれないし、もしかしたらもっと高いバレエシューズを選ぶようになるのかもしれない。

500円のバレエシューズは、今後なかなか履かないだろう。

 

それでも500円のバレエシューズを履いて遭遇した出会いも、それ以降に一緒に過ごしたバレエシューズと共に遭遇した出会いも、とても素敵な出会いばかりだった。

多分いい靴は値段じゃなくて、出会いを探しに行く勇気をくれる靴。

 

今までと同じように、穴があくほどたくさんの時をこのバレエシューズと過ごすつもりだ。

さあ、またいい靴で、素敵な出会いを探しに行こう。

 

まずは、人生で初めての出張を共に。

 

 

 

お題「愛用しているもの」